( ´_ゝ`)魔王が世界を征服するようです



3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 20:36:38.08 ID:Lmo9jzup0
 


(#><)「おりゃあああああぁぁぁぁああああ!!」

気合を込めた声で叫びながら、ビロードは草原を走っていた。
その背後からは、何匹ものモンスターが追いかけている。
一度捕まったら命はない。と断言できるほどの量だ。

足の早い者がいないのが不幸中の幸いだろう。

(#><)「くわああああああああぁぁぁぁぁああ!」

だからビロードは草原を走っていた。
逃げて逃げて、必死に逃げて、
でなければあっという間にモンスターの爪にかかって死んでしまう。




5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 20:38:49.50 ID:Lmo9jzup0
( <●><●>)「……もうちょっと静かに走れないんですかね」

(#><)「むり言わないで欲しいんですううううう!!」

ビロードの走る位置は決まっていた。
ワカッテマスの周りを、円を書くようにぐるぐると回り続けている。

追いかけられているビロードと違って、
ワカッテマスは居眠りが出来そうなほどノーマークだが。




6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 20:40:26.43 ID:Lmo9jzup0
(#><)「ていうかまだですか!いい加減つかれてきたんです!」

( <●><●>)「あともうちょっとです」

ワカッテマスの持っていた杖が赤鈍色を放っている。
魔力を糧として、杖の先端を中心とした光だ。
その光が眩いほどまでに膨らむと、
ビロードの後ろを足並みそろえて走っていたモンスターらに照準を合わせる。

( <●><●>)「いきますよ」

炎。と口の中で小さく呟いた。
光は、ただの光から炎の塊へと変化していく。
ワカッテマスは、勢いをつけてモンスターに振りかざした。




7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 20:42:29.57 ID:Lmo9jzup0
炎が到達すると、一瞬のうちにモンスターは吹き飛んだ、
そうして、体勢が崩れたモンスターらが起き上がる前に、ビロードが次々に止めを刺していく。
数が多いばかりで、それほど力のないモンスターばかりで助かった。



全ての息の根を止めたところで、ビロードは「はぁ」と息をついた。

(;><)「うーん、最近モンスターによく遭遇するんです」

( <●><●>)「確かに。前はこの辺ではあまり見かけなかったものですが」

二人はVIP城へ北上していた。
と言っても、VIP城はまだまだ遠い。
あと2つや3つ、小さな村や町を経由してつくようなところだ。




8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 20:46:20.23 ID:Lmo9jzup0
と言っても、VIP大陸の町から町までの主要な通路は
木を伐採し、凹凸を平に均し、石などで固めている。

自然を好むモンスターらはあまり道へは近寄らない。



だから、こんなにもモンスターに出くわすのは不思議なことなのだ。

( <●><●>)「まぁそういう時もあるんでしょう。
         ほら、走っている間に見えてきましたよ、クエイク村です」

(;><)「え、どこどこ、どこですか?やっとついたんですか!」

指を差した先にあったのは、本当に小さな村だった。




10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 20:52:29.23 ID:Lmo9jzup0

(・ω・)丿「ここはクエイクの村だよ」


入って早々出迎えたのは子供だった。
話かけようとすると、すぐにこの言葉を言った。

( ><)「あのー」

(・ω・)丿「ここはクエイクの村だよ」

( <●><●>)「君……」

(・ω・)丿「武器や防具は装備しないと意味がないよ」

(;><)「どどどどどうしましょう!言葉が通じないんです!」

(・ω・)丿「武器や防具は装備しないと意味がないよ」




11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 20:55:19.49 ID:Lmo9jzup0
どうしよう、変な子供に声をかけてしまった。
うろたえながらも、ビロードはダメ元でもう一つ質問した。

(;><)「あの、宿屋を……」

(*・ω・)丿「宿屋なら僕の家が経営しています。
       一緒に宿屋まで行きませんか?」

言い終わる前に、子供はハキハキと返事をした。
どうやら一人遊びをしていただけのようだ。




13 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 20:59:45.78 ID:Lmo9jzup0
連れられた宿屋は意外と賑やかだった。
副業としてバーを経営しているのだが、昼間から飲んだくれのおやじが騒いでいた。

( ><)「………」

( <●><●>)「………」

( ><)「………」

( <●><●>)「………」

(;><)「……あの、何か喋ってほしいんです」

( <●><●>)「特に話題がありません」

(;><)「………」




14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:02:31.23 ID:Lmo9jzup0
2人はカウンター席にずっと座っていた。
それはもうずっと座っていた。
日が暮れて、夕日が差し込むまでずっと座っていた。

( ><)

( <●><●>)

( ><)

( <●><●>)

おやじが一人で騒ぐばかりで、
店主がいないから、どうすることもできないのだ。

子供も、ここへつれてきてすぐにどこかへ走りさっていったのだ。
何か騙されていたらどうしようかと、一抹の不安がよぎる。




16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:05:51.83 ID:Lmo9jzup0
きい、と軋んだ音を立てて扉が開いた。

ビロードがちらりと横目で見ると、男が2人入ってくる。
一人は鎧を着込み大きな剣を背中に担いでいて、もう一人はかなりラフな服装だった。

(*><)「うわぁ、すごいんです……」

みてみて、とビロードはワカッテマスに声をかける。
男がテーブルに立てかけた、その剣を指差した。

(*><)「あんなに大きな剣、はじめて見たんです!」

( <●><●>)「あなたは小さい剣しか使いませんしね」

(;><)「そういう意味じゃないんです」




17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:10:22.79 ID:Lmo9jzup0
武器屋で売っているような大剣とは違う、もっと別な存在感が出ていた。
その剣からオーラが出ていると言っても過言でもないような、そんな雰囲気。

( ><)(すごいんです……もっと近くで見たいんです)

ビロードは恐る恐る近寄った。
そのすぐ横に所有者が居る、ということにも頭が回らず
ただその剣だけが目に入る。


もう少しで触れる、というとき、横から思いっきり突き飛ばされた。
受身を取る間もなく、机や椅子の中に突っ込んで倒れる。




21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:17:17.70 ID:Lmo9jzup0
(,,゚Д゚)「何勝手に触ろうとしてんだ、クソガキ」

(;><)「えっ?あっ、す、すみませんなんです!」

(;><)「あんまりにもすごい剣なんでつい!!」

(#゚Д゚)「ついじゃねえよ、剣っていうのは命みたいなもんだ。
     それに汚い手で触ろうとしやがって……」

男がその剣を抜いた。
そんな、それだけで?とビロードは慌てたが、
どうやら男は本気のようで、巨大な剣を振り上げる。

(#゚Д゚)「………」

男が呟いた。「しね」という短い言葉。
のろいの言葉のような、ひどく気味の悪い言葉だったように感じた。




22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:22:31.70 ID:Lmo9jzup0
振り下ろすその瞬間に、立っていられなくなるほどの地震が起きた。
クエイク村という名前は伊達ではなく、
活火山の影響で頻繁に地震が起きるのだ。


しかし、その地震が普段と違っていた。
この地に住む者ではない彼等にとって、地震は地震に変わりなかったが、
村人と思わしき人々が、悲鳴を上げるほどの地震だった。

(;゚Д゚)「おわっ……っと!」

(;><)「あわわわわ」

そのせいで男は剣を振り下ろすことができず、ビロードは助かった。
助かったは助かったのだが、折角入った建物が、みしみしと気味悪く軋んでいる。




23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:26:12.79 ID:Lmo9jzup0
(;・∀・)「ギコリオ!外へ出ろ!」

(;<●><●>)「ビロード!逃げますよ!」

連れである2人が叫んだのは、ほぼ同時だった。



まだ揺れ続けている大地に、4人は何度も転びながら外へと飛び出る。
振動は止まることを知らず笑い続け、
そこに村があったことを否定するように、簡単に全ての建物が崩壊する。




25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:32:34.59 ID:Lmo9jzup0
村人と同じように、ビロードとワカッテマスは呆然とその様子を見ていた。
だがその中で、淡々と現状について話し合っている声がある。
さっきの男たちだ。


(,,゚Д゚)「これは魔王のせいか?」

( ・∀・)「さあ、どうだろうね。
      確かに魔王はこのくらいの地震を起こす事はできるけど」

(,,゚Д゚)「……違うって考えるのか?」

( ・∀・)「少なくとも僕はそう思うよ。別な要因が何かあるはず」


ふむ、と2人は同じように腕を組む。




26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:37:51.59 ID:Lmo9jzup0
一体こいつらは何者なのだ。
懸念の視線が集まる。

どこかで見たことがあるのだけど、どこで見たのか思い出せない。
もやもやする。どこで見たのだろうか。
彼等と同じように腕を組んでいると、ビロードは自分の記憶にびっくりして叫んだ。

(;><)「ああ!勇者!勇者なんです!」

指をさされて、ギコリオは迷惑そうにビロードを睨んだ。
勇者?と村人は胡散臭そうにギコリオを見た。

( <●><●>)「ああ、あの役立たずの勇者ですか」

と、ワカッテマスが続く。村人たちの心の声だ。
ギコリオは再び剣を引き抜いた。




27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:42:35.76 ID:Lmo9jzup0
( ・∀・)「あーはいはい、そこまでね。僕そういうの好きじゃないから」

剣呑な雰囲気のど真ん中に、モライドが立ちふさがった。
好きじゃない。と言っておきながらも、口元はニヤニヤと笑んでいる。

( ・∀・)「それと、君ら死にたくないなら、そゆこと言うのはよしときな、
      こいつ、こないだBIGな奴を取り逃がしてから機嫌悪いんだ」

(,,゚Д゚)「うるせえ」

(;><)「でででも、先に喧嘩を売ってきたのはそっちなんです!」

(,,゚Д゚)「そりゃ、てめえが俺の剣に触ろうとしたからだろ」

(;><)「う……」




28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:48:50.09 ID:Lmo9jzup0
相変わらずの雰囲気に、モライドは溜息をついた。
ああ、なんて人間ってこう、自分勝手でうざいんだろう。
決して口には出さないが、確かな本音だ。



微妙な雰囲気に包まれているクエイクの村に、一つの咆哮がとどろいた。
体を振るわせるようなそれは、火山の内側から響いているようにも聞こえる。

(;<●><●>)「……あれを見てください!」

ワカッテマスが指差した先には、火山の噴火口。
その噴火口からは、時折天高く、炎が伸びている。

しかし、噴火しているわけではない。
何かの吐息のような炎だ。




32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 21:57:16.85 ID:Lmo9jzup0
その場に居る全員が見守る中、火山の中からゆっくりと、燃え盛った何かが現れた。

暫くの間、そいつは火口付近で、その巨大な体を休ませていた。
4枚の空をも覆いつくすほどの羽が、ゆったりと風に靡いている。

ギコリオは思わず声を漏らした。

(;゚Д゚)「……ドラゴン?」

( ・∀・)「ああ、本当だ、ドラゴンだねぇ」

(;゚Д゚)「ちょ、おま……っドラゴンが出てきたのにおどろかねーのかよ!」

( ・∀・)「だって、ドラゴンは大人しいじゃない。
      風や炎を食べて生きているだけなんだから、
      こちらから攻撃しないかぎり襲ってくることはないんだよ」

へえ、そうなんだぁ。
ビロードが感心していると、火口に居たドラゴンが再び大きく吼えた。




36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:02:56.30 ID:Lmo9jzup0
鼓膜が破れそうなほどの声だった。
一通り吼えきると、口から炎を吐きながら空に舞い上がる。

そうして、4枚の羽で凄まじい風を起こしながら、地上に向かって炎を吐いた。
その炎に舐められた大地は、森であろうが、砂地であろうが、ことごとく炎上する。
一面が火の海になって、その熱気が遠くのこの村にも届いた。


(,,゚Д゚)「……どこが、大人しいって?」

(;・∀・)「あれれー?おっかしいなぁ……」





37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:06:43.84 ID:Lmo9jzup0
ドラゴンは火の海の中に飛び込んだ。
そして、そこを中心に再び炎を吐く。

(;・∀・)「おかしいな……」

考え込んでいるモライドを尻目に、ギコリオは剣だけを持って走り出した。
目指すは炎の海。
慌ててモライドも追いかける。

(;・∀・)「おいおい!いくら何でも単独でドラゴンは無理だぞ!」

(#゚Д゚)「お前が手伝えば良いだろ!」

(;・∀・)「無茶言うな!」




41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:11:34.11 ID:Lmo9jzup0
( ><)「ぼ、僕でよければ手伝うんです!」

(#゚Д゚)「ガキは邪魔だ、すっこんでろ!」

2人を追って続いたビロードだったが、
ギコリオに走りながら突き飛ばされた。
面白いように回転しながら地面に転がる。

( ・∀・)「あーあー、子供を殴るなんて……」

倒れたビロードの横をモライドが通り過ぎたが、やれやれと肩をすくめただけだった。



(。><)「な、泣かないんです……僕は子供じゃないんです。
      僕だってハンターなんです……」


遠くからでも感じる熱気に当てられて、
結局ビロードはそのまま立つこともできなかった。





43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:15:28.58 ID:Lmo9jzup0
 




そのドラゴンの咆哮は、はるか遠くの地にも届いていた。
VIP城はもちろん、VIP大陸からはるか海を越えた、AA大陸にも響いたのだ。




それは微かな声だった。
おお……と空に響くだけで、耳を済ませなければ気付かないほどの微かなもの。


( ´_ゝ`)「……何だ?」

AA大陸の城の最上階から、ぼんやりと海を眺めていた兄者が、
その城の誰よりも早く異変に気付いた。




45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:20:36.71 ID:Lmo9jzup0
そして、兄者の声に弟者がいち早く反応する。

(´<_` )「どうした兄者」

( ´_ゝ`)「……いや、何か聞こえないか」

(´<_` )「……?さぁ、何も聞こえないが」


そうか、と兄者は答えた。
自分の気のせいなのか、と。

しかしその疑問は、兄者の足元でごろごろと寝転んでいたつーが打ち消した。

(*゚∀゚)「確かになんか聞こえるな。人間世界の方だぜ」

( ´_ゝ`)「あーやっぱりそうなのかー、なんの音だろうな」




48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:24:57.77 ID:Lmo9jzup0
ううむ、と兄者は海の先を睨んだ。
はるか彼方にある雲が、微かに赤く見える。


( ´_ゝ`)「向こうの大陸で何かやってんのかなー。
      見てきても良い?」

(´<_` )「……捕まるなよ」

弟者はそれだけを言うと、さっさと部屋から出て行った。
人間世界になど一欠けらの興味もないのだろう。


それじゃあ行こうかな、と歩き出した兄者の肩を、
つーがその鋭い爪で掴んだ。
普段、指に仕舞われている、意外と長い爪が全て食い込む。




49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:28:57.80 ID:Lmo9jzup0
(;´_ゝ`)「いってえええええええええええええ!!!!」

(#゚∀゚)「なー兄者!オレも行く!オレも行くぞおおおお!
     こないだおいてけぼりにしやがって!オレはまだうらんでるんだからな!」

(;´_ゝ`)「わかった!!わかったから離して!
      痛い!痛いから!肩貫通してるから!」

結局その後、だだをこねるつーと、
そのつーを見張る為にロマネスクがワイバーンに同乗した。



風を切って、海を越える。

それまでは無駄話に話を咲かせていた3人だったが、
真赤に染まる大地を見て、誰もが言葉を失った。




53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:37:18.66 ID:Lmo9jzup0
緑の美しい大陸の上を、炎がのたくっていた。
今までだって、山火事などはあった。
だが、これはそんなものの非にならない。


「おおお」と空に響く声が再び響いた。



(;´_ゝ`)「お、お、俺、先いくから!」

降りる当てもなく、はるか空中に留まっていたワイバーンから、兄者は飛び降りた。
あまりに素早い行動だったので、ロマネスクもつーも、止めることができない。

(;゚∀゚)「おい!まてよ!先いくからって、どこいくんだよ!」

後を追いかけて飛び降りようとしたつーを、
すんでのところでロマネスクが捕まえた。




54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:43:33.07 ID:Lmo9jzup0
 



炎の中で、ギコリオは汗だくになりながらも剣を握っていた。
灼熱から身を護れているのは、剣から溢れる魔力の加護か。

(;゚Д゚)「ぜーっ……ぜーっ……」

それでも、ドラゴンから逃げるのが精一杯なのには変わりない。

(;・∀・)「ほら、だから言ったじゃないか!
      そのうちハンターが討伐にくるから、それまで非難してよう!」

ギコリオのように、魔剣を持っていないモライドだが、
彼は彼なりに自分の魔法で炎をしのいでいた。
しかし、モライドもギコリオと同じように、滝のように汗を流している。




58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:50:55.54 ID:Lmo9jzup0
(;゚Д゚)「よし、それならお前1人で逃げれば良い」

(;・∀・)「おいおい、何変な意地張ってるんだよ。
      新聞にあんなこと書かれたのがそんなにショックだったのか?」

(;゚Д゚)「違う、そういうんじゃない。俺は好きでハンターをやってるんだ。
     好きでモンスターを殺してるんだ。
     こんな強いモンスターを殺せる機会、他のやつらに渡してたまるか!!」

(;・∀・)(いやー、ハンターは真正マゾじゃないとやってけないって本当なんだなー)

ギコは気合を入れるように、ゴルァァ!と叫んだ。
そして剣を持つ手に力を入れる。




60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 22:56:47.30 ID:Lmo9jzup0
ギコリオが魔剣に力を込めると、
それに呼応するように、赤黒く禍々しいオーラがゆらゆらと揺れた。

ドラゴンにとって、ギコリオなど、その指の爪の先ほどにもならない。
だから剣はリーチが短く、巨大な敵には不利。

(;゚Д゚)「それなら……やつの攻撃が届かない場所から……」

渾身の力を込めて、剣を振る。
炎を斬り、風を斬り、ギコリオの放った真空波はドラゴンへと届いた。




届いただけだった。




63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 23:01:27.13 ID:Lmo9jzup0
硬い鱗に阻まれて、ふわっと拡散する。
ただでさえ巨大な体なのだ、普通の魔法なんかで敵うはずがない。

しかし、その攻撃は、ドラゴンの目線をギコリオに向けることには成功した。



巨大な目玉が、ぎょろりとギコリオを捉える。
地響きを起こしながら、火の海を走ってくる。

そうして、大きな口を開け、巨大な牙を見せ、
ギコリオの目の前で、灰をも消しさるほど高音の炎を吐いた。




66 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 23:09:16.12 ID:Lmo9jzup0
もうだめだ。
ギコリオは、逃げるでもなく、抵抗するでもない。
剣を構えることすらせず、ドラゴンの炎を見ていた。


ほんの目と鼻の先。
あと少しで丸こげになるほど接近した炎だったが、
すんでのところで威力が消えた。

熱かった鎧が、背中からひんやりと静まっている。

(;゚Д゚)「な、何がっ……うわっ!!?」

気付けば、ギコリオの両脇から腕が一本ずつ生えていた。
細いその腕は、一見してわかる。人間のものではない。

すぐ背中に何かの気配がして、
ギコリオは金縛りになったかのように固まった。




67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 23:13:17.01 ID:Lmo9jzup0
腕がするりと引っ込むと、背中のひんやりとした気配も離れる。
そして背後から現れたのは、ギコリオの大嫌いなモンスターだった。

( ´_ゝ`)「おい、これはどういうことだ?説明しろ」

そのモンスターが、ギコリオに無愛想に質問を投げかける。



その間に、ドラゴンは再び炎を吐いた。
だが、兄者が炎を払うように腕を振ると、ひらりと炎が消え去るのだ。




94 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 23:47:14.46 ID:Lmo9jzup0
(,,゚Д゚)「………」

ドラゴンは脅威だ。今の脅威はドラゴンなのだ。
だが、ギコリオは問いに答えることなく、
命の恩人とも言える兄者に剣を向けた。

(;´_ゝ`)「えっ?お、おい、おいおいおーい。
      今はそういうときじゃないと思うんだけども!」

(,,゚Д゚)「うるさい。いくら命を助けられたとしても、
    モンスターなんかと馴れ合うつもりはない」

(;´_ゝ`)「モンスターなんかと……か、手厳しいな」

兄者は頬をかいた。
そしてギコが顔をしかめる。




96 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 23:50:44.05 ID:Lmo9jzup0
(,,゚Д゚)「何故剣を抜かない。俺はいつでもお前を切れるぞ」

(;´_ゝ`)「ええ?うん、剣持って来てないからさ、抜き用ないんだよね」

ええーっと。ううーんと。と、兄者は色々、どう対処すべきかについて考えた。
その間もドラゴンが襲ってくるから、それに対応して魔法防壁を何度も作っている。

ドラゴンの攻撃が多すぎて、兄者がギコリオに背中を丸出しにした時には、
ギコリオは呆れて頭を抱えた。




100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 23:54:33.46 ID:Lmo9jzup0
勇者として、ここは魔王を切るべきなのか。
いや、それとも先にドラゴンを倒すのが先なのか。

どちらにしろ、一方を立たせれば、一方が立たないだろう。

(;゚Д゚)「……くそ、どうする……?」

それに、あまり時間を使っていては、他のハンターらが来るかもしれない。
先を越されてはこまる。

(;゚Д゚)「俺は、どうすりゃいいんだ……>>105




105 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/11(月) 23:56:31.64 ID:HD/meP4C0
兄者がドラゴンの相手してる間にスバー




110 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:02:42.09 ID:26ODVri40
 


(;´_ゝ`)「……ふむ」

兄者はひらりと宙を飛んだ。
その行方をドラゴンが目で追う。

炎を吐くが、その威力が徐々に弱まってきていた。


(;´_ゝ`)「やはりおかしい」


モララーの言ったとおり、ドラゴンは本来大人しい性格をしているのだ。
これほどまでに暴れるとなると、何か原因があるのではないか。




111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:06:20.08 ID:26ODVri40
しかし、その原因を調べるにも、労力がいる。
少なくとも、兄者がすぐに調べることが出来るほど簡単なものではない。

( ´_ゝ`)「倒さんとならんかぁ……気がすすまないなぁ」

炎のくすぶる地面に着地すると、兄者は両手を目の前に突き出した。
魔力を練り、イメージを形にする。

(#´_ゝ`)「ライトォォォォォ!!!」





眩い光と共に、巨大な猫が出現した。




118 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:11:14.35 ID:26ODVri40
竜にも負けない大きさの猫は、オアアーと気の抜けた声をVIP大陸に響かせる。
その時全ての生き物が脱力した。
人も、魔物も、植物も、そしてドラゴンも。

      |\   lVVVVl   /|
      ヽ\>┴(@)┴<// 
       〉´  /  \  `〈 
      i ⊂'⊃   ⊂'⊃ i
    _|/_  ▽  _\|_ 
     >ヽ -モ_人_チ- / く
     Z \   ヽノ    /__「
      └v'~r-----r^v┘
    ⊂へ   |―――|
        | |  |‐―――|
        ヽニ.|ー―――|
         └-------┘

猫は全てを見ていた。
そしてその隙に、兄者はドラゴンの上に駆けのぼる。

( ´_ゝ`)「わるいな、別に恨みはないんだけどさ」

出来るだけ渾身の魔力を掌に溜めて、兄者はドラゴンに放つ。
青白い光がはじけ飛び、ドラゴンは大きな叫びを上げて、
その巨大な体を地面に投げた。




120 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:18:28.32 ID:26ODVri40
兄者はドラゴンから降りると、自分の背丈もあるドラゴンの顔を撫でた。
非常に苦しそうな表情をしている。
世界の何かが壊れてきているのではないか、と兄者は思った。

(,,゚Д゚)「魔王」

思考にふけっていると、背後からギコリオの声がした。
「ああ、大丈夫だったか?」と振り返り、笑いかけようとした瞬間、
ギコリオの巨大な剣が兄者の胴体に突き刺さる。

( ´_ゝ`)「え?」

兄者は自分の胸を見た。
胸から腹まで、綺麗に突き刺さっている。
背中からは、恐らく刀身が出ているだろう。

(;´_ゝ`)「あれ?」




128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:23:47.77 ID:26ODVri40
兄者は慌ててそれを抜こうとした。
しかし、ギコリオが剣を振りかざし、天へと掲げる。
体重で、より一層深く刺さる。

胴体がひっかかっているだけで、手と足はぷらぷらと宙に浮いた。


(;´_ゝ`)「うそっ!?あっ、痛いんだけど!やばい!まじいたい!
      やばいってこれちょっと!!ぬいて!」

(;゚Д゚)「うわっ、なんでしなねえんだよお前!」

ぱたぱたと手足を動かして、ギコリオの手を剣から離そうとする。
ギコリオはギコリオで、その手から逃れようと剣を振り回す。

遠心力やら何やらで、兄者の腹の穴が少しずつ広がっていった。




135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:29:48.13 ID:26ODVri40
(;ФωФ)「魔王!!大丈夫であるか!?」

(*゚∀゚)「おーい!ドラゴンはもういいのかー?」

そこに駆けつけたのはようやく着陸地点を見つけた二人だった。
始めから走っていたが、兄者が宙ぶらりんに浮いているのを見ると、
顔を真っ青にして、ニ倍速で駆け出した。


(#ФωФ)「き、きさまああああああ!!!魔王に何を!!!」

(;゚Д゚)「くそっ……モンスターか!!
     おい!モライド、こいつらなんとかしろ!」

ギコリオが、いままでのいきさつを全て傍観している男に怒鳴った。
だがモライドは肩をすくめるばかり。

( ・∀・)「え、僕?僕さー不意打ちとかする人嫌いだからさぁー」

(;゚Д゚)「くそ!役立たずが!」




141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:37:13.12 ID:26ODVri40
そう言って、ギコは魔剣を構えた。
今はただの魔剣ではない。その名も魔王剣だ。
名前だけなら前の魔剣よりも強力だ。

(#゚Д゚)「くそ、こうなったら、お前らを殺して、
     このままこいつを城まで持ってってやる!」

ギコリオは兄者がぶらさがったままの剣を振り上げた。
その動きで兄者が「ぎゃあ」と叫ぶ。
どう対応すべきか。思わずロマネスクが怯んだ。

(  ;_ゝ)「あ、ちょっ……まじ、助けて……、おなかが……おなかがしくしくしてきた……」

(;ФωФ)「魔王っ……!い、今助けるのである!もうちょっと辛抱してくだされ!」

(;*゚∀゚)「ままままままおうがんばれ!まけるな!」

(  ;_ゝ)「うん……お願い………」




147 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:46:23.85 ID:26ODVri40
ロマネスクがクロウを構える。
ギコリオは剣を構える。魔力を練り上げ、それを剣に与える。
すると、魔剣は闇のようにまがまがしい光を放つのだ。

( ;´_ゝ)「あ……あ、熱っ!何か感触が気持ち悪い!やなんだけどこのオーラ!」

(#゚Д゚)「うるせえ!剣の装飾の分際でしゃべるな!」

( ;´_ゝ)「言ったな!?この世にはしゃべる剣っていうのも存在するんだぞ!」

(#゚Д゚)「俺のザリチェはしゃべんねえよ!」

戦闘の緊張を粉々にしながら、2人は叫びあった。
そしてその隙に、ロマネスクはギコリオに切りかかる。
それをギコリオは剣で制した。

丁度兄者の腕の部分に当たり、ぱっくりと4本の傷口が新たに出来る。




152 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:52:13.06 ID:26ODVri40
( ;_ゝ;)「あああっああああっあっあっ!!」

(;ФωФ)「おおおおおおおおおお!!」

( ・∀・)「あーあー……」

(;*゚∀゚)「おいロマネスク!どこ狙ってるんだよ!!」

(;ФωФ)「わ、わざとじゃないのである!」

( ・∀・)「まぁ、普通に戦ったらそうなるわなぁ」




(,,゚Д゚)「へっ!お前らの大事な魔王がどうなっても良いなら、
     まだかかってきても良いんだぜ?」

(;ФωФ)「むぐぐ……」

計画通りのように言っているが、ただの偶然である。




154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 00:57:59.71 ID:26ODVri40
ロマネスクも、つーも、完全な接近戦タイプだ。
だからどちらが掛かろうと、同時にかかろうと、この二の舞は避けられないだろう。

どうして兄者を捕獲しようかと悩んでいると、
完全に見物人を気取っていた男がニタニタと笑いながら前へでた。

( ・∀・)「よーし、面白そうだから僕も参加するんだからな!」

そうして杖を前に出す。
ギコリオは驚きのあまり、「はぁぁぁあ!?」と不良にも負けぬ「はぁ」を繰り出した。

(,,゚Д゚)「おまえ……人間とモンスターとどっちの味方なんだ?」

( ・∀・)「え?そんなの言うまでもなく魔物だけど」

(;゚Д゚)「はぁぁぁぁぁぁ!?」

( ・∀・)「僕、魔物が好きだって前言わなかったっけ」

(;゚Д゚)「ああ、聞いたけど、そりゃポケモンの意味でだろ?」

( ・∀・)「いや、性的な意味で」

ギコリオは本日3度目の「はぁ」を発動した。




161 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 01:02:46.50 ID:26ODVri40
モライドは杖に意識を集中させた。
杖の先端がふわりと白く輝く。その光を天へと突き上げる。

その光はギコを包んだ。
いや、その剣にいる、兄者を包み込んだ。




(;・∀・)「げっ、やべえ!魔法間違った!」

優しく輝いた光は、兄者と剣との接点に収束した。
そして徐々に傷が塞がっていく。


『ヒール』である。




166 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 01:09:51.19 ID:26ODVri40
( ФωФ)「ぬ?魔法を間違ったのであるか?
        魔王の傷を癒してくれたのでは……」

(;・∀・)「あ、いや……気付いてないなら良いや……」



こほん。と咳払いを一つつくと、モララーは再び杖を構える。
するとギコが再び剣を構えた。
さっきよりも些か元気よく、兄者がぷらぷらと揺れる。



次に杖が光ったのは、白い光ではなくて、青い光だった。
冷ややかに、鋭く光っている。

(;・∀・)(えー……アイスランス、アイスランス……っと、次は間違えないぞ)




169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 01:14:41.97 ID:26ODVri40
力を込めた光は、一つの冷気の塊になってギコリオを包んだ。

(,,゚Д゚)「ふんっ、こんなもの……」

ギコリオは腕を振ったが、まとわりついて離れない。

(;゚Д゚)「うお……なんだこれ!」

体の表面に、冷気によって空気中の水分が固まりついた。
それが徐々に広がっていき、最終的には氷付けの勇者が出来上がった。


つーが拍手をしてモララーに飛び掛り。
ロマネスクがギコリオに駆け寄って、その手から魔王剣をもぎ取った。




171 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 01:17:38.70 ID:26ODVri40
( ;_ゝ;)「おお……一時はどうなることかと……」

(;ФωФ)「本当によかったのである。
        さ、魔王、剣を取りましょうぞ」

( ´_ゝ`)「あ、ああ……そうだな……」

(;・∀・)(うへぇ……)


ロマネスクは魔剣ザリチェを手に取った。
兄者はその場で構えて、少しの痛みで、引き抜けるはずだった。

しかし、予定は未定である。




174 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 01:22:08.10 ID:26ODVri40
モライドが、兄者が剣についたまま回復をしてしまったので、
体が剣に完全にくっ付いてしまったのだ。

いくら抜こうとしても、引き抜くことができない。

(;´_ゝ`)「………」

( ФωФ)「………」

(;´_ゝ`)「え?なんで?」

( ФωФ)「………」

首を傾げる兄者だったが、ロマネスクは気付いてしまった。
そしてそれを兄者に告げる事が出来ない。

(;ФωФ)「そ、そんな恐ろしいこと……」

剣を抜くには、刺された時よりも酷い痛みが待っているかもしれない。




剣を抜きますか?このままにしておきますか?
>>176




176 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 01:24:16.13 ID:AcC65dx2O
抜かない




184 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 01:32:02.50 ID:26ODVri40
抜かないという決定に、モライドは少しほっとした。
それと同時に、少し残念だとも思った。
ちょっと抜いてみたかったとか、本人には言えない。

(;´_ゝ`)「え?なんで抜かないの?俺ずっとこのままなの?」

(;ФωФ)「抜けなくなってしまったので……もうしわけないが……」

(;´_ゝ`)「そ、そうなの……?わかった……」

うむ。とロマネスクは頷いた。
昔からの、この人を疑わない素直な気質が、変わってなくてよかった、と。




それから彼等はワイバーンに乗って魔王城へと帰っていった。

(;´_ゝ`)「おなかが重い……」

( ・∀・)「今度安価で抜いてもらいな」

(;´_ゝ`)「う、うん……」




186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2009/05/12(火) 01:33:36.05 ID:26ODVri40
( ´_ゝ`)「………」

(*゚∀゚)「………」

( ФωФ)「………」

( ・∀・)「………」

(;ФωФ)「あれ?モライド殿、何故いるのであるか?




( ・∀・)「……あれ?いや、皆のってたから」


こうしてまた1人、仲間が増えたのであった。






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