- 797 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 19:40:34.14 ID:6P/4KFIuO
- 第四話「ちょっとした打ち解け」
- 802 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 19:49:49.27 ID:6P/4KFIuO
- 内藤から連絡があったのは、あの時から四日後。
事後、いまいち仕事に集中出来なかった俺だが、ジョルジュのさりげないサポートのおかげでそれなりにこなせるようには回復していた。ついでに、ケツの穴の痛みも。
携帯の着信ランプが光ったのは、この調子なら『なかったこと』に出来るかもしれないと思い始めた暁のことだった。
ディスプレイには『内藤ホライゾン』の表示。
出るべきか出ないべきか――一刻迷い、俺は電源ボタンを押した。
(
'A`)「……」
今は出るべきではないと思ったのだ。
まだ頭の中が整理しきれていない。いまあいつとは会話らしい会話はひとつもできないだろう。
携帯を握りしめ、内藤が落ち込んでいる姿が頭に浮かぶ。いや、あるいはやはり出てくれなくて良かったと安堵の表情を浮かべているのか。
- 806 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 19:56:11.37 ID:6P/4KFIuO
- 今は距離をおかなければ。
とはいえ、これから内藤と前のように付き合っていこうとは思わない。無理矢理犯すような、ましてや親友に発情した男になど二度と心を開けないだろう。
雑踏に溶け込むように感情もあちこちへ分散し、最後には無となる。
そうだそれでいい。そんなキャラクターだったはずだ。他人のことであれこれ悩んだって無駄なんだ。きっと。
(
'A`)oO(どっか、行くか)
幸い自宅へ持ち越しの仕事はない。これから明日の出勤まで、自由だ。
映画でも見に行こうか。レイトショーなら今からでも間に合うだろう。
俺は足早に駅へと向かった。
- 811 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 20:09:09.05 ID:6P/4KFIuO
- 俺はチケット売り場の前で漠然と立ち尽くしていた。
一大決心をしなければならなかったからだ。
目の前に佇む宣伝の看板。
ひとつは大人のお友達向け美少女アニメ。ひとつは子供用の美少女ヒーローアニメ。
なんと、どちらも上映は今日まで。レイトショーもあと一本。
((;'A`))「俺は…俺はどうしたら……」
*「あれ、お父さん……?」
ひょこんと顔を覗き込まれる。
ξ゚听)ξ「あ、やっぱそうだ」
この前のミニスカサンタだった。
( 'A`)「お父さんってのはやめろ」
反射的にそう返してしまい、今のはちょっときつく言いすぎたかもなとミニスカサンタの顔色を伺った。……気を悪くしてはいないようだ。良かった。
ξ;゚听)ξ「そういえば二十一なんでしたっけ。あの時は失礼を……」
- 824 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 20:26:45.72 ID:6P/4KFIuO
- ( 'A`)「いや、まあ、老けた見た目の俺が悪いだけだし」
ξ;゚听)ξ「いえ、そんな――あの、えと」
しどろもどろになっているミニスカサンタがなんだか微笑ましくなりながら、俺はふたたび思考を究極の選択へ切り替えた。
どちらにすべきか――ううむ。
ξ゚听)ξ「映画、ですか?」
彼女は言ったあと、慌てたように言葉をつけたす。
ξ;゚听)ξ「ここにいるんだから映画ですよね。じゃなくてえっと――なに観るんですか?」
( 'A`)「あーいま悩んでてさー」
なにとなにを悩んでいるかは口が裂けてもいえないが。
( 'A`)「えっと、君は……」
ξ゚听)ξ「ツンっていいます」
( 'A`)「つ、ツンちゃんはなにを観るのかな」
ξ゚听)ξ「あたしはですね」
途端、満面の笑み。
- 829 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 20:32:51.24 ID:6P/4KFIuO
- ξ゚听)ξ「これです!」
効果音が聞こえてきそうな勢いで彼女は指を差した。そこにははい、子供向け美少女ヒーローアニメ。
( 'A`)「あ……」
ぽろりと言ってしまう。
( 'A`)「実は俺も……」
ξ*゚听)ξ「そっ、そうなんですか!?」
ツンちゃんは鞄から冊子を取り出すと、俺に見てくれと差し出す。おずおずと受け取ると――
(*'A`)「うおおおお!」
ファン涙モノのプレミアム公式ガイドブックだった。しかも原作者のサイン付き。
(*'A`)「こっこっ…これをどこで!?」
ξ*゚听)ξ「応募したんですよっ!コミックス十六巻の帯のやつをっ!そしたら見事当たっちゃって」
(*゚A゚)「それって当選者一名のみじゃなかったけ!?」
- 833 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 20:37:18.01 ID:6P/4KFIuO
- ξ゚听)ξ「えへへっ、実はそうみたいなんです」
(*'A`)「うわーすげーうらやましー」
それからしばらくアニメについて語り続け、そろそろ上映の時間が迫ってくる。
ξ゚听)ξ「あ、あたしまだチケット買ってなかった」
( 'A`)「そういや俺もだ」
さらば成人男性向け美少女アニメよ。
ξ゚听)ξ「……あの、あたしチケットおごります」
( 'A`)「え、なんで?」
ξ゚听)ξ「だってこの前ケーキ買ってくれましたし。なのに失礼なこと言っちゃいましたし。だからそのお詫びです」
と言いながらツンはさっさとチケットカウンターで二枚くださいと注文をし始めていた。
( 'A`)「俺、払うって」
ξ゚听)ξ「いいんです」
- 838 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 20:41:41.66 ID:6P/4KFIuO
- その代わり、と彼女がチケットを口元にかざしながら微笑む。
ξ*゚听)ξ「あたしと隣でもいいですか、席」
(
゚A゚)「………」
答えはひとつに決まっている。
ポップコーンを食べながら劇場へ歩いていたとき、ツンちゃんがぽつりと呟いた。
ξ゚听)ξ「年の瀬に、なんか寂しいですよねあたしたち」
( 'A`)「……だな。あ、でも」
ツンちゃんのおかげで寂しくなくなった。
……なんて、恥ずかしくて言えるわけがねえ。
ξ゚听)ξ「でも、なんですか?」
(;'A`)「いや、なんでもない、です」
- 845 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 20:45:30.08 ID:6P/4KFIuO
- それでもしつこく聞いてくる彼女をしどろもどろになりながら誤魔化す。
そうこうしているうちに気付けば目的の場所で、二人して中へ入って行ったのだった。
*「すっごいよかったねえ、恋空」
*「……あーはいはいスイーツ(笑)だったな」
*「なにそれえーもうー。それにいまちゃんと話聞いてたー?」
*「……」
獰猛な目が、俺とツンちゃんを凝視していたことにも気付かないまま――
第四話 完
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- 859 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 20:52:05.65 ID:6P/4KFIuO
- 推奨ツン脳内変換ボイス:くぎゅ
- 861 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/25(日) 20:55:51.50
ID:csSnw7QI0
- >>859
ハァハァ
→第5話
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