- 619 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 01:33:51.90 ID:6P/4KFIuO
第三話「ちょっとした安堵」
朝、内藤はいなかった。
遅刻ギリギリだったので、食パンをかっこみ歯を磨き顔を洗った。脱ぎ捨てたままだったスーツを着て鞄を持って、そのまま家を出たる向かう場所はもちろん会社。
内藤がいなくて良かったかどうかは、まだ、分からない。
駅の改札を抜けてあと一分で来る電車を待つ。列に並び、お気に入りの電波ソングを聴くためにiPodを取り出した。
(
'A`)「……」
かわいい萌え声も、神だと思う打ち込みも頭に入ってこない。そればかりか聞こえてくるのは内藤の、声。
( ^ω^)(ごめんお、ドクオ)
( 'A`)oO(ごめんじゃ、ねーよ)
あのあと、内藤は俺に謝りっぱなしだった。ぐちゃぐちゃに汚れた俺の下半身を一生懸命拭きながら、俺に謝る。
何度謝っても足りないと、内藤は謝り続けた。
俺が聞きたかったのは謝罪じゃない。理由だ。
- 623 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 01:39:22.98 ID:6P/4KFIuO
- それなのに内藤は何度も何度も俺に謝るだけ。
俺は痛むケツを擦りながら、いつのまにか眠りに就いてたのだ。
(
'A`)「……クソ」
電車が来ることを無機質なアナウンスが告げた。
電車は相変わらず超満員だ。
俺はいつも端っこを取れるよう時間調整をしているのだが……遅刻がきいたらしい。一番辛い真ん中に身を置くことになってしまった。
(
'A`)oO(付いてね)
ため息を吐きかけたその時。
- 626 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 01:46:22.51 ID:6P/4KFIuO
- ( 'A`)「!」
誰かの手が、ケツに触れた。
間違いじゃない。何度も内藤も。故意のようにつつかれる。
昨日の今日のせいで、いつもは何かの間違いだと誤魔化せるその行為に身をのけぞらせ過剰反応してしまう。
隣のOLがあからさまに嫌な顔をしたがそんなことよりも一体誰だと横目を使い確認する。
だが犯人は自ら名乗り出たのだ。
( ゚∀゚)「俺だよ、俺」
肩からひょこりと顔を覗かせたのは、同僚のジョルジュだった。
(;'A`)「ジョ……」
( ゚∀゚)「おはよ。ドクオ。すまん気付かせたくてやったんだが、変なとこさわっちゃった」
( 'A`)「……いや、別に。気にしないでください、長岡さん」
事務的な口調の裏では、安堵感が心にしみわたっていた。
- 627 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 01:52:42.37 ID:6P/4KFIuO
- ( ゚∀゚)「ジョルジュで良いのに、なんでだよー」
( 'A`)「特に理由はないです、すみません」
ジョルジュの首元でネックレスがきらりと光った。金のプレートにははっきりと英語で『MIKA』と刻印されていた。
大方クリスマスにペアネックレスとして購入したんだろう。だが淡い色とはいえ、カラーシャツと金のネックレスじゃホストにしか見えない。
ジョルジュの顔立ちもそれを際立たせる。
俺の視線に気が付いたのか、ジョルジュが得意気に話し始めた。
( ゚∀゚)「これ? 昨日ミカちゃんにもらったんだ」
( 'A`)「……ペアじゃないんですか?」
( ゚∀゚)「ペアじゃねーよ。そういうの重いだろ?」
( 'A`)「……」
実はほんのばかしペアに憧れていた自分がいる。
- 630 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 01:58:39.02 ID:6P/4KFIuO
- やはりこの男とは根本的に合わない。話すだけ気を使ってしまうだけだとイヤホンのボリュームを上げた。
( ゚∀゚)「ド――オは――あ」
む、なに言ってるのか分からん。少しだけ音量を下げよう。
ここで下げなきゃ良かったと後悔するのだが、それはもう遅かった。
( ゚∀゚)「ドクオは俺とのペアネックレス欲しいのか?」
( 'A`)「……あい?」
なにいってんだこいつ。
( ゚∀゚)「いや、だってそんな顔してたからさ」
( 'A`)「そんな顔ってなんだ……なんですか」
した覚えはない。神に誓ってない。
( ゚∀゚)「敬語やめろよなー同期なんだからー」
けらけらと笑うと、男はさっきの流れをすっかり忘れてたのか今日までのプロジェクトについて話しだした。
(;'A`)「……」
やっぱり、付いていけない。
- 633 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 02:06:15.12 ID:6P/4KFIuO
- オフィスのドアを開けるとみなさん驚いた顔で迎えてくれた。
俺とジョルジュが揃って出勤はそんなにめずらしいか。いや俺だって驚いてるけどさ。
川 ゚ -゚)「おはよう、二人とも」
クー部長が無表情のまま俺たちに近付いてきた。
川 ゚
-゚)「ずいぶん珍しい組み合わせだな」
俺が愛想笑いしか浮かべられないでいると、ジョルジュが俺を引き寄せて部長に微笑んだ。
( ゚∀゚)「実は恋人同士でして」
( 'A`)「ああっ!?」
打ち合わせやキーボードを叩く音で騒がしかったオフィスが、一瞬無音になった。
川 ゚ -゚)「それは……その……
( 'A`)「違います違います! こいつのタチの悪い冗談です!」
( ゚∀゚)「そういうことにしといてしんぜよう」
( 'A`)「おおおお前なっ!」
川 ゚ ー゚)「朝から漫才か。今日はどうしたんだろうな」
(
'A`)「すいませんでした……」
しこたまジョルジュに蹴りを喰らわしてやりたい衝動を飲み込んで、デスクへと向かう。
- 635 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 02:14:37.98 ID:6P/4KFIuO
- ( 'A`)「ああー」
デスクには乱雑と並べられた資料。あと今日までにまとめなきゃいけないもろもろのもの。
エクセルを起動し企画書を作成する。
某大型掲示板のおかけでタイピングはかなりの自信だ。問題は文章力。
カタカタとリズムよく打ち込みながら、ふと思う。
朝からジョルジュに会っていなかったら自分はいまこうやって何食わぬ顔で仕事が出来ていただろうか。
きっと無理だ。
(
'A`)「……」
隣でなにやら携帯高速タイピング中のジョルジュに、そっと声をかけた。
( 'A`)「ありがとな」
( ゚∀゚)「……」
どうやら聞こえなかったらしい。ちょっと、良かった。
俺は一回伸びをすると、再びパソコンへと向かったのだった。
第三話 完
- 636 :い ◆zcmFYGOgmI :2007/11/25(日) 02:15:38.45 ID:6P/4KFIuO
- 俺のIDが6Pな件
これは………
- 637 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/11/25(日)
02:18:17.31 ID:XOZkx3aJO
- >>636
アッー
→第4話
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